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 きちえもん
きちえもんという名をオウムに付けたのは歌舞伎の「大見得」を切る仕草をするところからだった。彼との出会いは97年12月23日。
クリスマスイブの前日だった、とっても寒かったの覚えてる。

彼が家に来るきっかけは、その頃つとめていた熱帯魚ショップのお客さんから「どなたかオウムを飼ってくれる人、探していただけませんか?」の一言だった。普段明るいその人がなぜかその時だけは伏し目がちに話しをするので、どうしてか尋ねたら

「そのオウムを飼っているのは知り合いのおばぁちゃんなんです。」
「ご高齢で飼えなくなったということですか?」
「いえ、実はそのおばぁちゃん、お一人で暮らしているのですが、今度入院することになりまして、それでオウムの世話が出来なくなるからと。。。」
「そうですか、では入院して家を空けている間ということですね?」
「いえ、、、そのおばぁちゃんもう家には戻らないと思います。。。」
「どういうことでしょう?」
「末期のガンで入院するのです。。。もう長くはないとお医者様が言ってました。。。」

聞けば、身よりのないそのおばぁちゃんのお世話をその方がしていたのですが、ある時急におばぁちゃんが倒れられて病院に運ばれ、検査の結果末期ガンであることがわかった。

しかし身よりのないおばぁちゃまには親族として癌であることを知らせるべき相手がいない、それでおばぁちゃんのお世話をしていたその方が代わりに「告知」を受けられたとのこと。

「私がそのオウムを引き取りたいのは山々のですが、ご承知の通り我が家は、犬や猫たちで一杯の状況です、そのオウムやおばぁちゃんのためにも鳥に愛情を持たれている方の方がいいと思いまして」
「そのおばぁちゃんは、ご自分が癌であるということを知ってるのですか?」
「いえ、話していません、早く良くなってそのオウムとお話しするのを楽しみにしているんです。」

「そうですか、、、、、、再入院はいつなんですか?」

「12月の25日です。」



「わかりました、そのオウム、責任持って私がお預かりします」

我が家にはその時、6羽のインコやジュウシマツが居たのだが、話を聞いた以上自分がそのオウムの世話をしたいって思った。

「いっけねぇ!お前のこと、おばぁちゃんなんて呼んでたんだか聞くの忘れた!」

緑色の鮮やかなそのオウムはシッポまで入れると50センチ以上の大きさ、

我が家に来た当日は、甲高い声で鳴きっぱなしで、時折人間の言葉を話していた。

「おばぁちゃんを呼んでるのかな。。。」

「おばぁちゃんに教わったんだね、おお、その見得を切るのって、

ひょっとしたらお前のおばぁちゃん歌舞伎好きか?(^^)」

足を上げると少し離れた所にペタンと足を置く仕草を見て私はそう彼にいった。

「よし!名前はきちえもんに決定ぃー!!」

おばぁちゃん、ごめんね名前わからないから勝手に付けさせてもらいました。きちえもんに向かって私はそうつぶやいていた。

きちえもんのその甲高い声は少し寂しい声に聞こえたが、

その後、日を追うごとにその甲高い声はあまり出さなくなり、

さかんに人の言葉を真似するようになっていた。

そして、年が改まった冬のある日、お店にオウムの里親を捜していた人が来た。

「おばぁちゃんが、昨日亡くなったそうです・・・・・」

「え・・・・・・・」

「オウムは元気ですか?」

「は、はい、とても元気です・・・・・」

私はそれだけ答えるのがやっとだった。

「そうですか、良かった、これから葬儀などがありますので、私はこれで」

「わざわざ、知らせてくれてありがとうございます」

私は店の外までその人を追いかけていき、そう礼を言った。

そしてその夜、私はきちえもんのカゴの前で思いっきり泣いた、私はなりふり構わず嗚咽するほど泣いた。

一度も会ったこともないおばぁちゃんではあったが。

「きち、、、お前のおばぁちゃん、死んじゃった・・・・・

おまえのおばぁちゃん、天国行っちゃった・・・・・」

「もう、会えないんだよ、きち、おばぁちゃんにあえなくなっちゃった・・・・

おばぁちゃん、早く退院してお前とお話しするの楽しみにしてたのに・・・・・

それなのに、それなのに、おばぁちゃん死んじゃった・・・・」

「おばぁちゃん一人で寂しかっただろうに・・・・・

もう一度だけでいいから、お前と会わせてあげたかった・・・・

おばぁちゃん、ごめんね・・・・おばぁちゃん、ごめんね・・・・」

「おばぁちゃん、きっと天国へ行って、きちえもんのこと見てるよ、

おばぁちゃん生きてるときはひとりぼっちで寂しかったから、きっと天国じゃ

いっぱいの家族に囲まれて幸せだよね・・・・

そしてお前が天寿を全うして天国へ行ったら、今度こそ、おばぁちゃんと離れちゃだめだよ・・・・」

ごめん、、、、、キーボード涙で見えない、、、、ごめん、、、、、もう書けない、、、、、、

1996からの日記 | 固定リンク | トラックバック:0 | レス:0
(1998/12/06(日) 16:38)

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